日本にはオリジナルのゴルフブランドがいくつかあります。
その中でも特に異彩を放つゴルフブランド「ムジーク:Muziik」をご存知でしょうか?売れないと言われた高価格帯のシャフト、スイングスピードに合わせた軽いボール、などそれまで業界のタブーとされていた分野に果敢に挑戦し成功を収めてきた、まさに日本が誇るオリジナルブランドとしての地位を確立しつつあるムジーク。
今回は東京都お茶の水にある株式会社ムジークさんのショールームにて、代表取締役の吉本宇志さんを取材して参りました。「面白くないものは作らない」そんなブランドイメージを体現したような人物が描くゴルフ業界の未来とは?ゴルフ業界に挑戦し続けるかっこいい大人のご紹介です。
目次
ゴルフブランド「ムジーク」を作ったきっかけとは?
―もともとはサラリーマンをされていたとのことですが、ムジークを立ち上げたきっかけを教えてください。
吉本:私は長年、大手ゴルフブランドにて営業やマーケティングに携わっていました。会社同士が合併、分離を繰り返す中で、そのたびにブランドイメージは1から作り直しといった形になり、なかなかブランドイメージを確立できない事にフラストレーションを感じていたんです。時が経つにつれ、どうしても自分の納得のいく仕事がしたいと思い自分のブランドを作ることを決意しました。
―他社への転職や代理店業務は考えなかったのですか?
吉本:大きい企業になってしまうとどうしても売ることが全てといった側面があります。売り上げ至上主義はもうやりたくないなと思ったんです。また海外ブランドの輸入では規約が多く自分の思い通りにいかないためブランド構築が難しい。そうなるとやはり自分でやるしかないなと。
―自社ブランドを展開するにあたって大切にしていることは何ですか?
吉本:他とは一線を画すアイデアやクオリティー、デザインを特に大切にしています。長年ゴルフ業界に携わってきたので、ありがたい事に国内でもトップクラスのクオリティーで商品を制作できる人脈があったことが大きな力となりました。
大手の様に大量生産は出来ませんが、ムジークでは全ての商品で最高峰の技術を使って作っていますし、アフターフォローも大切にしています。新しいモデルが出ても旧モデルを安売りすることもありません。また他では出来ないような細かな要望にもお応えすることが出来るのもムジークの強みだと思います。
ムジークの理念:面白くなければ作らない
―現在ではゴルフクラブ、キャディーバッグ、ボール、グリップ、キャップなどムジークオリジナルの商品を多数展開していますが、最初から順調だったのですか?
吉本:いえいえ、最初はまったく上手くいかず初年度は赤字でした。一番最初に作ったのはパター練習用の重いボール「e-PUTT BALL 90」だったのですが、これが出来るまでが本当に大変でした。ボールを押す感覚を掴むために通常の2倍の重さ90gにした球なんですが・・・それまで重いボールを作るなんて言う人間がどこにもなかったので、作ってくれる工場を探すのに苦労しました。
―重いボールは売れましたか?
吉本:当初から誰も作っていないものを作ろうと思っていたので、認知に時間がかかりましたが、球を重くすることでパッティングに必要な押し出す感覚が身に付く自信はありました。プロコーチの江連忠さんや上田桃子プロなどのご協力もあり、次年度から少しずつ軌道に乗り始め、ドライバー、グリップといった商品まで拡大することが出来ました。
市場ニーズではなく「市場創造」
―すごく単純な質問なんですが、最初はある程度売れる見込みがあるものから始めるのがセオリーだと思うのですが・・笑
吉本:そうですよね。けど僕は自分で会社を始めたからには誰も作っていないものを作ろうと決めていたんです。他社と差別化出来ないものは作らない。僕は市場ニーズという言葉があまり好きではないんです。皆が知っているモノよりも、知らなくて役に立つモノに情熱を傾けたい。これまでもこれからも売れるから作るといった考えは無いですね。
―かっこよすぎです。しかし他社と違うものを作るという事はアイデア、生産、販売の部分でそれだけ苦労があるのではないでしょうか。
吉本:現在もムジークは挑戦の連続ですが、創業当初は随分苦しみました。しかし自分の財産の大半をつぎ込んで始めたうえ、元同僚にも大見得を切ってしまっていたのでもうやるしかないといった感じですね。
ムジーク以外誰も作らなかった「軽いボール」
今、全国のゴルフショップで品切れが続出しているゴルフボールがあります。その名も「コルテオ39」ムジークのオリジナル商品です。実はこのボール、スイングスピード37m/s以下のゴルファーのために作られた39gの軽いボールなんです。力の無いシニアゴルファーや女性ゴルファーからの圧倒的な支持を受けています。
―この球は通常のゴルフボールよりも軽く作られていて、なおかつスイングスピード37m/s以下のゴルファーが最も飛ばせるように作られているそうですね。
吉本:はい。飛ぶボールと言われているもののほとんどが規定ギリギリの重い球なのですが、実際力の無いゴルファーには向いていません。なぜなら重いボールというのはヘッドスピードが速いゴルファーだからこそ飛ぶんです。ヘッドスピ―ドが遅い方が重いボールを打つとインパクトで力負けし、スイングは減速してしまい飛距離は出ません。
―軽いボールはそれまで市場になかったのでしょうか?
吉本:「風に負ける」「強い球が打てない」といった印象が先行しどのメーカーも作っていませんでした。しかし、風に負けるよりもボールの重さにスイングが負ける方がよっぽど飛距離が出ないんです。実際使っていただいた方からは「軽い方が初速が上がる」「軽いから球が上がる」といった大きな反響をいただいております。
ムジークとゴルフ業界のこれから
―東京都からお墨付きをもらったそうですね?
吉本:はい。10年間地道に良いものを作ることを心掛けてきた結果、このたび東京都から経営革新計画に係る承認を頂けました。ざっくり言えば良いものを作っている会社に東京都が様々な支援をして後押ししてくれるといった内容です。今後ムジークのさらなる飛躍の為に大きな力をいただけたと思っております。とはいえ、ブランドのイメージを最も大切にしながら世の中にアピールしていきたいと考えています。
―ムジークの今後の展開を教えてください
吉本:創業当初と変わらずムジークは他がやっていないことにフォーカスしていきます。会社としての売り上げももちろん大事ですが、僕の場合まず「面白いか否か」これが一番大切。自分の価値観に合わなければ動くことはありません。現在はシニアゴルファーを中心にさまざまな年代の方がゴルフを楽しんでいます。全員には合わなくても良い。その人に確実に満足していただける商品をこれからも作っていきます。
―次にやるアイデア教えてもらえませんか?
吉本:それは無理です。笑 しかし皆さんがアッと驚くようなムジークオリジナルのアイデアや商品がすでに着々と進行していますので、是非楽しみにして頂ければと思います。来年でムジークは創業10周年を迎えます。まだまだ発展途上のムジークですが、日本のゴルフ業界がもっと発展するために微力ながら精一杯頑張っていきます。
海外を忙しく飛び回るムジーク代表の吉本さんは50代とは思えないほど若々しくアクティブでした。実際にムジークのドライバーと5番ウッドを打ってみましたがめちゃくちゃ良い打感で飛距離もばっちり!いつかオーダーで作りたいなぁ。
東京都お茶の水にあるムジークショールームでは実際に製品を手に取って見ることが出来ます。工房も併設されているので商品の購入だけでなく微調整なども対応しているとのこと。実際に見学してみたい方は電話での予約が必要なのでお忘れなく。
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