出典:PGAツアー
プロに転向してから3年後の2015年、アメリカのPGAツアーで初優勝。それからわずか2年、2017年の全米オープンでメジャー初制覇を遂げたのがブルックス・ケプカです。
プロ転向直後にヨーロッパの2部ツアーに参戦、各国を転戦するなど厳しい環境に身を置いて修業を積んできました。そうした中で心身を磨き大舞台でも負けないパワーと冷静さを身につけていきます。
そして2018年、全米オープンでの連覇、そして全米プロゴルフ選手権でも優勝を果たしました。一躍、世界のトップに躍り出たブルックス・ケプカ。その強くたくましいゴルフの秘密と人柄に迫ります。
目次
プロフィール
出典:PGAツアー
ブルックス・ケプカ=Brooks Koepka
身長=183センチ 体重=84キロ
生年月日=1990.5.3(28歳)
生い立ち
ブルックス・ケプカはアメリカのフロリダ州・ウエストパームビーチで生まれました。ウエストパームビーチはマイアミから車で北に1時間ほどの町です。
父のボブさんは高校時代、野球、バスケット、レスリングなどでも活躍していました。ボブさんは卒業後、叔父が経営するゴルフ場で働きはじめ、独学でゴルフを学んでスクラッチプレーヤーになります。ブルックス・ケプカはその父からゴルフを教えられました。
ブルックス・ケプカは野球にも熱中しましたが、7歳のころに父が出場するゴルフの試合を見に行って興味を持つようになったと言います。長期間の休みにはゴルフ合宿に参加、大会にも出るようになっていきました。12歳のときに野球を辞め、ゴルフに専念するようになります。
ウエストパームビーチは毎年2月にアメリカPGAツアーの「ホンダ・クラシック」という大会が開催されている場所です。ブルックス・ケプカは小さいころからこの試合を観戦、2005年にはボランティアで、優勝したパドレイグ・ハリントンの組のスコアボードを持ったこともありました。
アマチュア時代
地元の高校を卒業後、タラハシーにあるフロリダ州立大学のゴルフ部でプレー、大学ナンバー1に送られる「オールアメリカン」の称号を3度受賞しています。
アマチュア時代の2012年には地区予選を勝ち上がり、サンフランシスコ郊外のオリンピッククラブで開催された全米オープンに出場していますが、6打差で予選落ちをしました。
プロでの活躍
ヨーロッパ2部への参戦
出典:ゴルフネットワーク
2012年の夏、ブルックスケプカはプロに転向。アメリカでの出場権を持っていないため、ヨーロッパの2部ツアーである「チャレンジツアー」に挑戦します。
チャレンジツアーには7月から参戦、この年の試合数は10試合限定でしたが、同年9月には8戦目の「チャレンジ・デ・カタロニア」で初優勝。賞金ランキング43位となり、翌年のチャレンジツアーの出場資格を正式に獲得します。
2013年にはヨーロッパ各地を転戦。イタリアで行われたチャレンジツアー「モンテッキア・ゴルフ・オープン」で通算2勝目を挙げます。さらに同じ月、スペインのカナリア諸島で開催された「フレッド・オルセンチャレンジ・ド・エスパニャ」でトーナメントレコードの24アンダーで優勝という快挙を成し遂げました。
3週間後、ブルックス・ケプカはスコティッシュ・ハイドロ・チャレンジでこの年の3つ目の優勝を勝ち取ります。
ヨーロッパツアーでもデビュー、初戦のスコティッシュオープンでは12位タイでフィニッシュしました。
アメリカPGAツアー初勝利まで
2014年、アメリカPGAツアーのフライズドットコムオープンで3位タイに。全米オープンでは4位タイに入ります。これらの活躍により、ブルックス・ケプカは初めて、マスターズへの出場権を得ました。アメリカPGAツアー全体でもポイントランク125位以内に入り、翌年の出場権を勝ち取ります。
2014年11月にはヨーロッパツアーのタキッシュエアラインズオープンで優勝。ヨーロッパツアーでの初勝利となりました。この年、ブルックス・ケプカはシーズンの最優秀新人に選ばれました。さらにヨーロッパツアーのランキングでも8位に入り、2015シーズンのシード権を獲得します。
2015年、2月に行われたウェイスト・マネージメント・フェニックスオープンでアメリカPGAツアー初勝利を挙げました。
日本での2連覇
2016年11月、日本のレギュラーツアー、ダンロップフェニックスに出場するため初来日。この大会では通算21アンダー、263ストロークの大会新記録で頂点に立ちます。
さらに2017年のダンロップフェニックスにも出場。初日から最終日まで首位に立つ完全優勝、2位に9打差をつける大会記録で2連覇を勝ち取りました。
3度のメジャー制覇
2017年全米オープン
出典:PGAツアー
ウィスコンシン州エリンヒルズで行われた2017年の全米オープン。初日が67の5アンダーでスタートしたブルックス・ケプカは2日目を2アンダー、3日目を4アンダーと確実にスコアを伸ばして通算11アンダー、2位で最終日を迎えます。
そして最終日の前半、3つスコアを伸ばして首位でターン。松山英樹に1打差の追撃を許しますが、サンデーバック内の半ばから3つバーディを重ねて後続を振り切りました。
ブルックス・ケプカは2012年のデビューから5年目にしてメジャー初優勝を遂げました。
2018年全米オープン
2017年末に左手首を故障、2018年のマスターズは欠場となったブルックス・ケプカ。4月末の復帰後、アメリカPGAツアーのフォートワース招待で2位に入って復活へののろしを上げます。
迎えた2018年の全米オープン、シネコックヒルズカントリークラブは強風が吹き荒れ、硬くしまったグリーンが選手を迎え撃つ超難コースとなっていました。
ブルックス・ケプカは初日を5オーバーとしますが、2日目を4アンダー、3日目を2オーバーと耐え、通算3オーバーの首位タイで最終日を迎えます。
最終日はトミー・フリートウッドの猛追を受けますが、前半を3バーディ1ボギーとスコアを伸ばしてターン。後半は2バーディ2ボギーのイーブンでしっかりまとめて通算1オーバー。フリートウッドを1打差で振り切りました。
前年に続きブルックス・ケプカは全米オープン2連覇。1988年、1989年のカーティス・ストレンジ以来、29年ぶりとなる偉業を成し遂げました。
2018年全米プロゴルフ選手権
出典:GDO
2連覇を果たした全米オープンからわずか2か月弱。世界のプロの頂点を決める大会でブルックス・ケプカは再び輝きます。
初日1アンダー、33位でスタートしたブルックス・ケプカは、2日目63の7アンダーで一気に3位タイまで順位を上げます。3日目も4つスコアを伸ばし、単独首位で最終日を迎えました。
追いすがるのはアダム・スコット、そして復調著しいタイガー・ウッズです。ブルックス・ケプカはタイガー・ウッズのゴルフを見て育ち、アダム・スコットも大のファンだと言います。
最終日、アダム・スコットは3つスコアを伸ばして猛追。タイガー・ウッズもこの日のベストスコアである64でフィニッシュします。
尊敬する2人に負けじと、ブルックス・ケプカは最終日も4つスコアを伸ばし、トータル16アンダー。ギャラリーの大歓声を受けるタイガー・ウッズを2打差で振り切って、全米プロ初優勝を遂げました。
同一年度で全米オープンと全米プロを優勝したのは1980年のジャック・ニクラウス、2000年のタイガー・ウッズらに続く史上5人目の記録となりました。
メジャー成績一覧
スイングの特徴
300ヤードをゆうに超えるドライバーショットを誇るブルックス・ケプカ。アドレスでは大きくスタンスを開いて下半身を安定させて構えます。
トップではベルトのバックルが正面の位置からあまり動いていません。肩甲骨周りを始めとする、非常に柔軟な上体をつかって捻転差を作っています。
そしてダウンスイングでは、腕が腰の位置まで下りてきているにも関わらず、ヘッドはまだ頭部後方のあたりにある、いわゆる「強烈なタメ」が出来ています。このタメがあるからこそ、圧倒的な飛距離につながっています。
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ここが世界トップクラス
出典:USA TODAY
2017年の全米オープン、最終日の最終ホールのことです。
エリンヒルズゴルフコースの18番は681ヤードのパー5。ブルックス・ケプカは3番ウッドでティーショットを打つことを選択します。安全策をとったのではと思われた場面ですが、なんと340ヤードの超ビッグドライブ。
PGAツアーの公式データではティーショットの飛距離は平均312ヤードで全体の11位につけています。これはあくまで平均の飛距離。条件次第ではこれを数十ヤード上回ることも可能です。
しかも「僕は飛距離がいつも十分に出るタイプなので、いつもフェアウェイキープを意識している。100%の力で打つことはありません。いつも90%くらいのイメージです」と語っています。驚愕のロングヒッター。その飛距離が強さの源の一つとなっています。
強さの秘密
ブルックス・ケプカの強さは飛距離だけではありません。
アメリカPGAツアーにはどれだけピンに寄せられたかを測定したランキングがあります。
ブルックス・ケプカは200ヤード以上で全体の3位、175ヤードから200ヤードでも20位、150ヤードから175ヤードでも14位につけています。少し距離が残っている状況でも、確実に寄せていく技術を備えています。
また、本人によると「ウェッジでスピンコントロールするのが好き」とのこと。その際に全力で打つのではなく、75%から80%でスイングするのがベストと話します。弾道の打ち分けも意識、風向き、ピンの位置などによって、高いボール、低いボールを打ち分けてコントロールをしています。
飛距離はもちろんのこと、その次の1打でも確実性を持っているのがブルックス・ケプカです。
性格と人柄
出典:SPORTINGNEWS
冷静な理由
ブルックス・ケプカはスクラッチプレーヤーでもある父のボブさんにゴルフを学んできました。小さい頃からその腕前は相当なもので、性格も負けず嫌い。父にもなんとか勝ちたいと思っていました。
そして、ボブさんと一緒にラウンドしていたブルックス・ケプカに1打リードするチャンスがありました。カートに乗るときには得意な顔をしていたと言います。
そのとき父は言いました。「勝負に勝ったと思っただろう?誇らしげな顔をしている。だが勝負はまだ終わっていない。二度と相手に自分の感情を悟らせるな」。
このラウンドでブルックス・ケプカはボブさんに負けました。このアドバイスを聞いてから、彼は感情を表に出すことなく、冷静にふるまうことを徹底しているといいます。メジャーの頂点。上り詰めてもその姿勢は変わることはありません。
大好物の日本食
2016年と2017年に連覇を果たした、宮崎県・フェニックスカントリークラブで行われたダンロップフェニックス。
火曜日にコース入りしたブルックス・ケプカが日曜日まで6日間連続、レストランで注文したメニューがあります。それは「宮崎牛の牛丼」。会場であるフェニックスカントリークラブの名物メニューです。
ブルックス・ケプカは通常、卵とじにしてある「宮崎牛の牛丼」の卵抜きを常に希望しており、毎回たいらげていたとのこと。
以前、タイガー・ウッズがおかわりしたこともある名物メニュー。これだけ気にいってくれたことに感謝し、「ケプカ丼」という名称にするとレストランのスタッフが伝えたところ、本人も笑顔を見せてくれたといいます。
世界ランク推移
使用クラブ
■ドライバー テーラーメイド M3 460 ドライバー (9.5度) 三菱ケミカル ディアマナホワイトボードD + 70 |
■FW&UT テーラーメイド M2 フェアウェイウッド (3番、16.5度) |
■アイアン ナイキ ヴェイパー フライ プロ アイアン (3番) ミズノ JPXツアー900(4番-PW) |
■ウェッジ タイトリスト ボーケイデザイン SM7 ウェッジ (52度、56度) タイトリスト ボーケイデザインSM4 TVD(60度) |
■パター スコッティキャメロン ニューポート2 SLT 10 |
■ボール タイトリスト プロV1 xボール |
👇2018年の4大メジャーを総まとめ!ケプカの強さが際立ちました。
日本で行われたダンロップフェニックストーナメントでも2大会連続で圧巻のプレーを見せてくれたブルックス・ケプカ。メジャーでの驚異ともいえる活躍であっという間に世界のトップクラスに立つ選手となりました。
2018年、全米プロゴルフ選手権のタイガー・ウッズとの首位争いはギャラリーを熱狂の渦に巻き込みました。これからもブルックス・ケプカは記憶と記録に残るプレーをし続けてくれるでしょう。世界を席巻するそのゴルフから目が離せません。