「ゴルフはあるがままの状態で打つ!」ことが大原則ですが、天候が悪くて打ったボールが地面にめり込んだりすると、次のショットに支障をきたしてしまいます。その救済措置として、プリファード・ライが設けられています。
基本、プリファード・ライはローカルルールでの措置ですが、ただ規則を実行するだけでは痛い目の合う危険性があります。
プロのトーナメントでも、勘違いをしてしまい「68打罰」を受けたり、ルール設定の文言の不明瞭さで競技委員会と選手間でトラブったり、することが起こってしまうとても間違いやすい規定になります。
今回の記事は、プリファード・ライについて解説していきます。ぜひ、一読していただき、荒天時のラウンドで生かしてください。ローカルルールとは、公式な規則でカバーしきれない異常なコース状態の場合に対処するために競技委員会が定めることができます。
目次
プリファード・ライとは?
プリファード・ライは、ゴルフ場の公平な条件のもとでラウンドすることを前提とした用語です。
悪天候が続きジェネラルエリア(フェアウェイなど)がひどい状況になっているときには、コースの保護の目的からボールを無打罰で拾い上げて汚れを拭き取り、状態の良い場所にプレースしてプレーを再開することを「プリファード・ライ」と言います。
基本的にプリファード・ライには、明確な基準はなく競技委員会で取り決められる事項ですので、実施されるかどうかはその時の状況次第となります。プレースは基本的には6インチ以内となっていますが、コースの状態によって1クラブレングス以内となされる場合もあります。
プリファード・ライの注意点
注意しなければいけないのは、処置の仕方になります。プリファード・ライは、フェアな条件なので、ボールを動かしても良い範囲や方法については規定していません。
ローカルルールとして採用する際には、「6インチ以内」「1クラブレングス以内」にプレースすることができるなどの補足の文言が付け足されることになります。プリファード・ライは、芝のコンディションによって変わってきますので気をつけてください。スタート前には必ず確認しましょう。
プリファード・ライが適用された場合は、動かして良い範囲は決まっていないけど、公平なところにプレースできることを覚えておきましょう。球を拾い上げるときはマークをしなければなりません。
リフト・アンド・クリーン
プリファード・ライに似たような処置があります。「リフト・アンド・クリーン(持ち上げてきれいにする)」と言いますが、 「ボールに泥が付着する可能性はあるが、コース状態はさほど悪くない」ときなどに定められるローカルルールです。
これは、プリファード・ライと同じくボールを拾い上げて拭くことができますが、元の位置に戻さなければいけません。「6インチ以内」「1クラブレングス以内」のプレースではなく、元の位置に戻すリプレースすることがプリファード・ライとの違いになります。
カジュアルウォーターの処置も覚えておくと役に立ちます。
プリファード・ライはゴルフの精神に反する?
基本はあるがままにプレーすることですが、コンディションが悪い状態で打つことは、ぬかるみの大小もあって不公平さもでてきます。プリファード・ライを行うことによって公平性を担保することができます。悪天候でのコンペの時にプリファード・ライを採用してもいいでしょう。
雨の日のラウンドは大変です。しっかり準備してプレーしましょう。
プリファード・ライの事例
2006年5月「日本プロゴルフ選手権 初日」
出典:谷汲カントリークラブ
前日の雨の影響で、ゴルフコース全体がウェットの状態でボールに泥が付着しやすくなっていたため、プレーの公平性を保つために競技委員会は、「ボールを拾い上げて拭くことができる。ただしリプレースすること」というリフト・アンド・クリーンのローカルルールを採用しました。
ところが、尾崎直道プロ、深堀圭一郎プロ、丸山大輔プロの組は、その特別ルールを「プリファード・ライ」と混同してしまったために失格になりました。3人ともアテスト(スコアを提出した後)後に気づいたためスコアの誤記が失格の理由になりました。
2012年4月「サイバーエージェントレディス」
悪天候以外でもプリファード・ライが適用された事例です。国内女子ツアー「サイバーエージェントレディストーナメント」が開幕前にローカルルールで追加の競技特別規則が発表されました。
理由は、コース内に大量の黄金虫(コガネムシ)が発生しているため、プレーに支障をきたす場合はノーペナルティで救済の処置が行える追加の競技特別規則「プリファード・ライ」が適用されました。
そして、注釈として「黄金虫はルースインペディメントです。球を拾い上げる前やその球をプレースした後、黄金虫を取り除く際に球が動けば、1打の罰でリプレースになります。黄金虫によって球が動いた場合は、局外者によって動かされたことになり、無罰でその球はリプレースとなります」と掲示されました。
2016年11月「伊藤園レディス 初日」
出典:GDO
激しい雨による芝生のコンディションが悪くなった初日、芝を短く刈り上げた区域(フェアウェイなど)では無罰でボールを拾い上げて拭いて、元の位置にリプレースできる特別規則が適用されました。
ところが、上原彩子プロは元の位置に戻すのではなく「1クラブレングス以内の範囲に置き直せる」プリファード・ライと勘違いしてプレーを続け、ローカルルール違反の2罰打×19回=38罰打、スコアの過少申告(2罰打)×15ホール=30罰打とされて、合計「68罰打」が科せられました。
この年の1月に規則が改定され、ペナルティを受けていたことを知らずに過少なスコアを提出した場合、以前とは異なり競技失格にはならず、違反に対するペナルティにスコア誤記の2罰打を加えて競技を続行しました。
2019年も大きな改定があり、アマチュアに優しくなりました。バンカーが苦手な方は必見です!
「プリファード・ライ」は、ぬかるんだ場所を避けるためのありがたい措置ですが、追加規定などの注意書きを見落として独りよがりで判断するとペナルティや失格になる可能性があります。
ゴルフは、ルールやマナーにとても厳しいスポーツです。しっかり処置ができないとトラブルになってしまいます。ご紹介したことを参考に、悪天候でも楽しいラウンドをしていきましょう!